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第28回全国青年市長会総会

森喜朗・元首相による基調講演

         (2014年8月28日)

 

演題「東京2020オリンピック・パラリンピックについて」(講演メモ)

 

第85代、第86代内閣総理大臣の森喜朗氏が8月28日午後、網走市内のエコーセンターで講演しました。第28回全国青年市長会総会の基調講演として「東京2020オリンピック・パラリンピックについて」と題して、東京オリンピック・パラリンピックに向けてのビジョンやスポーツ政策を通じた地域づくりなどについて語りました。講演中は撮影禁止でしたので、会場の様子を紹介しつつ、講演録のメモを掲載します。東京オリンピック・パラリンピック組織委員長として、また、日本ラグビーフットボール協会会長としての様々なお話をされていましたが、嬉しかったのは、網走を日本のラグビー界で最高の合宿地として評価して頂いていること。ラグビー合宿の誘致を進めた先人の皆さんの努力の積み重ねと先見性。すごいことです。

 

~以下メモ~

2016年のオリンピックを東京へ誘致しようとした際、ブラジル・リオデジャネイロに敗北したエピソードに触れ、「あの時、知事を務めていた石原(慎太郎)さんは本当に悔しがった。帰りのチャーター便で後の方まで行って都民の皆さんに謝っていた。石原さんはその期で引退という話もあったが、ギリギリまで口説いてもう1回選挙に出て知事になった。石原さんがもう1期やっていなかったらオリンピックは無かった」

 

「オリンピックの誘致組織の議長になった関係で昨年だけで海外12回も行った。ロシアやキューバは2泊4日だけど、大半は1泊3日。これは機中で寝るってことですね。0泊3日の行程もあった。オリンピックの誘致活動は選挙と一緒であらゆる縁をたどって回る。私も選挙負けたことありませんから、結構票稼ぎはできたと思っている」

 

「次は(東京五輪)組織委員長の成り手がいないっていう問題が出てきた。私、(2020年は)83歳ですよ。生きてるかわからない。安倍(晋三)総理大臣にそう言ったんだけど、『死んだらその時ですよ』と言われて(笑)、みんなが受けてくれなくて、結局受けました。今では受けて良かったと思う。組織委員会はあらゆる業界、団体が絡みますから。JOC、東京都、政府など。今回の特徴は、オリンピック・パラリンピック組織委員会として一本化したこと。これは世界で初めて。私はもともと一緒にしたらどうかと考えていた。健常者が走り、続いて、障がいを持った人が走る。リレーも混合でやる。健康のありがたさやひたむきに生きることの大切さを学べる。子どもたちに教育的な効果がある」

 

「組織委員会は東京都庁に140人態勢で置かれています。誰が採用したかはわかりませんが、JOC、東京都、文科省、民間企業などから人が出てきている。そこに11のセクションを作って局長にしかるべき人を充てるようにした」

 

「今後の課題は通訳。それも英語や中国語や韓国語といった言葉だけじゃなく、世界中のあらゆる言葉をつかえる人を必要。また、パラリンピックの人のための介護。しかも言葉をきちんと理解している形で。そういう人をどんどん育てる必要がある。全部で何人いると思います?8万人です。8万人の人を組織委員会で抱えて動かす。私、体重100キロ近くありますが、オリンピック終わったころには70キロぐらいに痩せるかと思います」

 

「また、難しいのはセキュリティ。スタッフや観客も含めて。かなり機械化されている。ソチ(冬季五輪)も南京(ユースオリンピック)も。座席の切符もそう。椅子にチップを入れて、切符を買った本人かを全部チェックする。サイバーテロ対策もあります。ロンドン五輪の際は2億回の攻撃を受けたそうです。競技場だけでない。周辺の地方都市も含めてです。そういったことを全国の企業が一生懸命進めています。ひとつ失敗すれば、全部失敗と言うことになりますからね。それから、携帯電話用のインフラ。8万人の人が競技場で一斉にスマホ使ったらどうなります。止まります。パンクを防ぐ。どうやるか、その研究も進めています。(東京五輪会場として想定される)有明、お台場、豊洲全部の競技を集めると観客含めて31万人です。ある日ある時間のですよ。その人たちが一斉にスマホを使ったらどうなりますか。道路もそうです。今大変な作業をしています。選手たちが力を発揮できる環境づくり。そういった運営をするのが組織委員会で今厳しくやっているところです」

 

「東京五輪の費用あっという間に7000億から8000億と言う話になる。それでも東北の復興もあるわけで、実際はそうはいかない。全部洗いなおせ、ということでいくつか課題になっている案件もある。ヨット競技、会場に波が入らないように防波堤がいると、400億円ですよ。誘致するときは『素晴らしいハーバー作りますから』とか票が欲しいから何とでも言った。ボートのコースも運河でやれるかと思ったら防波堤や諸々の施設で2000億円です。こんなことではすぐ1兆円にいってしまう。これは理解えられません。血税をそんな使い方していいのかと」

 

「アリーナもバスケットや体操でいくつか作るはずだったのをやめました。さいたまアリーナでどうかと。そうしたら、IOCの関係者から『ミスター森、選手村からさいたまアリーナへ40分で行けるか?』と聞かれた。警察に協力してもらって道路にオリンピックレーンを作ってノンストップで行く。これで大丈夫だと。バドミントンもそう。調布の武蔵の森でどうかと、それもまた40分で行けるかと。それで選手村から実際にバスで行けるかどうかのチェックがいるわけです。ビデオに撮って。私に運転しろなんて言うんですよ(笑)」

 

「今のところ最大の問題は、お台場のフジテレビ前の公園。ビーチバレーの会場には20億円~30億円かけて砂を入れ、1万5000人収容の仮設スタンドを置いて、終わったら撤去するという。無駄の最たるものです。やるんだったら千葉でも良い。千葉から横須賀まで東京湾、東京ベイです。『東京』のオリンピックに変わりはない」

 

「もうひとつ決定的なこと。羽田空港の航空管制とマスコミの空撮の関係です。東京は千葉、埼玉、神奈川と常に連携している。隣県と一緒にやっても良いだろうと思う。みんなが協力し合って、苦労しているが、舛添知事も都議会も一致している。有力議員も前回の選挙でみんな戻ってきた。東京オリンピック・パラリンピックは皆さんの期待に応えられる良いものになると思っている」

 

「東京オリンピック・パラリンピックは世界中から2000万人が東京を目指してやってくる。地方に恩恵がいきわたるようにしたい。ラグビーワールドカップがニュージーランドで開催されたが、人口約500万人の国に海外から40万人~50万人の人が来た。ホテルが足りないわけです。港に行くと巨大なビルがある。ビルかと思ったら大型客船なんですね。クルーズ旅行の途中に立ち寄って、ラグビーワールドカップを見て、またクルーズに出る。外国人の旅行はのんびりですから。五輪のツアーはいきなり東京へは入れずに地方から入れる方法もある。北海道に入って、それから東京へとか、ツアー組ませて。東京のオリンピックに行きませんか、といろいろなメニューを売り出す。2000万人が目指してやってくるわけですから、タイアップして誘客をしよう。今から6年あるので、みんなで良い方法を考える時間があります。また、合宿をうちに-という話もあります。28競技あるので、地方都市で合宿するようにしたい。意欲的なのは岐阜県です。高地トレーニングもできるし、ラグビー場も良いのがある。合宿に来た国との交流を始められることも想定できる」

 

「次はラグビーの話。ワールドカップが2019年に日本で開かれる。10~12、13地域で試合をしたい。2019年春までに新・国立競技場が開業する。地方では3~4万人が来ると言われているが、実際は1万5000人ぐらいか。仮設のスタンドでも何とかなる。切符を300億円分売らないとならない。放映権や広告は本部が全部持っていく。切符の売上だけが主催国に入るので、切符お願いします」

 

「ラグビーは本当に網走にお世話になっている。トップリーグのチームが軒並み合宿に入る。快適であることを認めてるんです。すごい街ですよ。何とか(w杯でも)網走で合宿させてあげたい。そのためには札幌で試合をすべきなんですよね。札幌から網走へ1時間半でくる方法は無いですか。旭川までは高速道路があるので、網走中心でどんどんやってほしい。水谷(市長)さんや大場(前市長)さんを立てて、進めていきたいと思っています」

 

「ワールドカップは45日間、サポーターはサッカーと違って中年以上なので懐豊かな人が多いですから、お金も落ちます。それから陸上のトラックが囲っているような芝生のフィールドはあまり好まれません。選手が豆粒ぐらいにしか見えない。ラグビー専用のコートが求められている」

 

「ラグビーのワールドカップは誘致に関わったので責任がある。オリンピックに目が向いてしまっているが、私がいることでラグビーを忘れさせない意味もある。どっちも忘れられないように。オリンピック、サッカー、ラグビーが世界の3大スポーツですから」

 

「さて、東京オリンピック・パラリンピックで何を伝えるか、ということですが、それは日本人の素晴らしさですよ。64年は戦後の復興。今度は東北の復興と世界からの支援に対するお礼を伝える場です」

 

「今、市長さんたちの心配ごとは『(人口減少で)俺の街が故郷が無くなっちゃうんじゃないの』ということ。政府は1億人をキープすると言っているが、どうやって?若い世代は子どもを産みたくないんだもん。そこは使命感をどう持たせるか、教育が鍵だと思う。若い人たちは結婚したくない。晩婚化。20歳や18歳で結婚して、子どもを産んで育てる。使命感や誇りを持って、そういう生き方をできるようにしたい。そういう点でスポーツは大変意味がある。私も豊洲のスポーツジムへ行ってますが、午前10時には300人が並んでいる。お年寄りは朝早いんですよ。それで、いろいろと声をかけられます。『オリンピックをまた見られるとは思ってませんでした。頑張って生きますよ』って。その人90歳超えてるんですけどね。スポーツ政策で前向きで、元気な気持ちになるんです。これから親、子、孫の3世代が一緒に暮らす社会づくりを進めたい。可処分所得が増えるんです。そうすると子どもの生んで育てる数も増える。人間の絆をもう1度深めるような形にしたい。技術が進歩すれば人間が本来持っていた何かを失いますので。IT政策を進めた当事者としての思いも込めて」

 

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