議員定数・報酬に対する考え方(2014年5月2日版)
・はじめに
今日の網走市の置かれている状況は少子高齢化、人口減少に歯止めがかからず、地域社会の維持にすら懸念が広がりつつあります。国立社会保障・人口問題研究所の最新の試算(平成25年3月)によると、2040年の網走市の人口は3万955人。3万人というと、網走市の歴史を振り返れば昭和10年の規模、街が築かれつつあるころと同じような水準までサイズダウンしています。一方で、国家財政を概観すれば、国の財政制度等審議会が最近発表した数値でいうと、1000兆円を突破した国の借金は2060年度には8000兆円まで膨らむという試算も出ています。網走市自体の財政再建に加えて、遠くない将来、国が自治体をサポートする今日の仕組みが維持しきれなくなり、網走市を含め地方自治体が自立、自活していかなければない時代がやってきます。その時、議会はどのような役割を果たすべきなのか。ぜひ考えてみて頂きたい。みなさんの故郷・網走を守るために知恵を出す。汗をかく。その覚悟が議会に問われています。
・今後の網走市議会に期待される機能
先に述べた極めて厳しい状況下で網走市において、行政サイドは様々な努力を重ねていますが、独自性あるまちづくりに取り組む地域では議会からも政策的なイノベーション(新たな切り口)が生まれています。地域の課題を発掘し、その解決策を合議で考え、そして具現化していく力が議会に求められているということです。例えていうと、今までの議会は行政サイドが作った政策という「商品」を採算性や中身、質などをチェックしていた「検品係」だったわけですが、今後は、これまでの「検品係」の経験も生かしつつ新たな政策を生み出す「開発係」へと進化していけるのかが地域の生き残りのカギにもなります。
・網走市議会の現状に対する認識
しかしながら、議会の現状としては、数々の課題を抱えたまま、そこに解決策が示されずにいます。主な課題としては①市民の間で議会への批判は根強い(何をやっているのかわからない、何のためにあるの)②議員の身分の不確定さや役割に対する共通認識の欠如(専業と兼職の混在、従たる職か主たる職か)③活動しづらい環境。待遇、活動を一生懸命やればやるほど身銭を切る現状④魅力ある職として見られづらい職務(名誉職なので「我慢して」という認識では志で頑張っていた人材が「もうやっていられない」と立ち去りが起きる可能性も、無投票のおそれすら)⑤人材が集まらない分、市民の失望も大きい、議会の機能も高まらない⑥地域の課題発掘や政策立案への期待が高まっていながら答えられていない。市民のニーズと議会の意識のミスマッチなどがあげられます。実はこういった課題は網走市だけでなく国内各地の自治体議会が同じように悩んでいるという実態もあり、そこに解決を示すということは、他地域の自治体議会の課題に対して一定の道筋を立てることにもなります。
・議会の質を高めるための「議員定数削減」、目指すべき議会モデル
網走市議会はこれまでも議員定数の削減に取り組んできました。戦後すぐの30人定員から26人、22人、20人と削減し、現在は市民2008人あたりに議員1人という割合となっています。こういった方向性を踏まえつつ、私たちは、
①人口減少社会に対応したコンパクトで意思決定が迅速な議会
②税収減に対応した低コスト型議会
③志ある優れた人材が集まる待遇を備えた議会
を目指します。
・定数5減で本会議主義へ移行
以上のビジョンを持ったうえで議員定数を現行の20人から5人削減し、15人に。この数値は2040年の人口推計を根拠にしており、人口3万人で15人であれば2000人に1人という現在の人口対議員定数比と同等で、今後25年近くを見据え、「議員定数の議論はこの水準で打ち止めにする。今後は質を高める議論に集中する」という宣言も含めています。また、定数を15人すると同時に、現在3委員会制を敷いている市議会を本会議中心主義へ移行させることも目指しています。本会議主義へ移行することで①議論がわかりやすくする、見えやすくなる②あらゆるテーマを議員が学ぶことになり、議員個々、議会全体の質の向上につながる③議会運営の効率があがり、兼職議員の就労時間を確保できる④議会事務局が議会運営業務に忙殺されず、議会の質の向上につながる職務に時間を割けるよう⑤市職員も他の部署の議論を聞くことになり、市組織全体で課題の共有につながる、などのメリットがあります。
・優れた人材を集め、議会の質を向上させるための報酬または活動費の増額を
網走市議会の現在の議員1人の報酬体系は1カ月38万円、夏季・期末手当が4・345カ月で年額約620万円。それに加え、月額2万円(年総額24万円)の政務活動費を受け取っています。仮に議員を専業とし、これらの手当だけで生活しながら議員として活動するとなると、国民健康保険、国民年金などの支出を含めて生活の維持が極めて困難な水準であり、さらに議員として研修、折衝、陳情などに動けば動くほど身銭を切っていくという構図になっています。これでは議員を目指そうという人材は出てこず、結果的に一定の収入が得られる人だけが議員となる、きわめて偏った構成となってしまいます。そこで、優れた人材を集め、議会の質を向上させるための報酬または活動費の増額が必要となります。
現在、網走市議会において、議員報酬と政務活動費に加えて委員会の行政視察や議会運営ための諸費用など諸々を盛り込むと議員1人を維持するのに必要な費用は年間約1000万円。先に述べた定数5減を実現すると議会費全体で年間約5000万円の削減を見込むことができるため、そのうちの3000万円を議員の報酬または活動費として15人に振り分けると、1人200万円の増額が可能となります。200万円の増額ができれば、専業で、かつ幅広く活動できるようになり、優れた人材が集まってくる可能性が高まります。また、年間2000万円の議会費削減にもなり、網走市の財政健全化にも貢献できます。議会費全体のコストは下げつつ、優秀な人材を集める流れをつくり、議員専業の人も、兼業の人も、自立を目指す女性や若者らも広く参加できる自治体議会のモデルにしていきたいと考えています。
以上の変革を成し遂げれば、網走市が人口減少に直面しつつも、志ある優れた次世代の担い手が集い、市民の期待に応えられる機関として、議会に期待される役割をしっかりと果たしていけると確信をしています。